2021年1月14日木曜日

大衆酒場「婆娑羅」の沢庵漬


好きで通い続けている酒場のことを書く。

三鷹駅北口徒歩1分、大衆酒場『婆娑羅』。
開業40余年の界隈大御所だ。
帰り道に通るので、ついつい寄ってしまう。

2020年4月。
早々に営業を自粛し、5月中旬に再開。
席数を減らして、しっかり対策をして客を迎え入れてくれた。
ソーシャルディスタンスを大事にするから、
いつもの半分の客数で満席になるゆえ、入れない人が続出する。

「すみません、席数減らして営業していて、今いっぱいなんです」
「すみません、3人はちょっと無理ですね。本当にごめんなさい」
「すみません、今はだめだ〜。空いたらお電話しましょうか?」

詫びる店主とスタッフを見るのは辛かった。

年末年始は「積極的休業」と称して冬休みを1月12日までと決めた。
が、再び緊急事態宣言。
2021年、結局一度も開店することなく、積極的休業が続いている。






年末の営業ラスト日に訪ねたら、
店先に、滑らかな白肌の大根が揺れていた。
店主・大澤さんが、毎年初冬に沢庵漬を仕込むのだ。

馴染み客が首を長くして待つ名物。

もちろん今シーズンも、恒例の手仕事は、丁寧に丁寧になされた。



大根は、世間のニュースとは無縁の時間を
じっくりと生き、沢庵漬は完成した。

Instagramを眺めていると、こんなメッセージが飛び込んできた。


漬け上がり、出番を待つ沢庵漬が
店頭にてんこ盛りなっているではないか。

写真を見た途端、口の中に婆娑羅の沢庵漬の味が広がり
いてもたってもいられず駆けつけた。

入り口には、婆娑羅恒例の「伝言ノート」が置かれている。
お客がメッセージを書けるノートで、
4年前に店主が骨折で休業した際に誕生した
手書きのコミュニケーションツールだ。

「いただきます」
「ありがとうございます」
「再開を待ってます」
沢庵漬を手にした客が、ひと言メッセージを残している。

残り福をいただいた。

Instagramの写真を見て蘇った味の記憶は、
いやはやなんともだらしないものだった。

実際に味わった沢庵漬は、
瞬間にガツンと刺激する力強い味。
噛み締めながら泣けてきた。

泣けるほどの沢庵漬だ

いつものコの字のカウンターで頬張りたかったと、
メッセージを書いた。

                 2021年の沢庵漬に感謝を込めて。
                           松井一恵


婆娑羅のホームページはこちら → http://www10.plala.or.jp/basara/










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