2013年4月23日火曜日

似ているようでやっぱり違う、韓国人の結婚式〜後編〜


前編では結婚式当日の花嫁ジヨンちゃんの様子、挙式の流れをまとめたので、後編では、挙式後に執り行われた儀式を中心にレポートします。


挙式後、ホール入り口に飾っていたウェディング写真を急いで片づける、ジヨンちゃんの親族。

式場側は「『ハコ』を貸している」イメージで、常駐スタッフもいるが、あれこれ世話を焼いてくれるわけではない。新郎新婦の親族、友人がせっせと動く場面を多く見かけた。



韓国の結婚式は日本のように食事をしながら行うパターンと、式後に食堂へ移動し、食事をするパターンの、ふた通りある。ジヨンちゃんは後者だったため、招待客はゾロゾロと階下の食堂へ移動。
新郎の家族と新婦は、招待客が食事をしている間に伝統婚礼儀式「ペベク」を執り行うというので、私は見学させてもらった。
「ペベク」とは、新郎新婦が親族にあいさつをする、韓国ならではの伝統的婚礼儀式。本来は親族のみで行われると聞いていたが、せっかくだからと見させてもらえることに。

結婚式場には必ず、この「ペベク室」があり、ペベクに臨む新郎新婦が伝統的礼装に着替えるための部屋が隣接している。
テーブルの上には栗やナツメ、乾物などの食べ物が並べられていた。
ペベクの流れは、

1.両親に「クンジョル」という深いお辞儀

2.新婦が持つ杯に新郎がお酒を注ぎ、それを両親が飲む

3.両親が、テーブルの上の食べ物を食べる

4.両親が新しく家族になる新郎新婦に向け、お祝いのことばを伝える

5.新郎と新婦が白く大きな布を広げて持ち、その布に向かって両親が順番に栗とナツ
メを投げ、それを二人がキャッチする

6.両親が、「ジョルカッ」と呼ばれるお金の入った封筒を二人に渡す

簡単に書き出すとこんな感じだ。
(両親とおばあちゃんを相手に、同じ儀式をくり返していたが、挙式と違いおごそかな雰囲気だったので、写真は控えた)

5の儀式には、子どもをたくさん授かりますようにと祈願する意味があり、ナツメ=男の子、栗=女の子とされ、キャッチした数だけ子宝に恵まれる、と言われている。

今は新婦の親族も交えてペベクを行う場合もあるらしいが、新郎の親族のみにあいさつするのが本来の習わしだそう。


写真は、新郎のお姉さんご夫婦。
つまりペベクは、新郎新婦の「目上の方」にあいさつする儀式ということになる。
親族へのあいさつを終えると、新郎新婦の儀式が始まる。
              

まず、お酒を注ぎ合い、腕と腕を交互に絡ませて飲む。
次に、新婦がくわえたナツメを二人で食べる。

この儀式には、実はおもしろい言われがある。
口にナツメの種が入った方が、家庭の中で主導権を握ると言われているとか。

この時、ジヨンちゃんの口の動きを見ていたら、「種、私が食べるね」と言っていた。
ということはカカア天下なのか?


最後に、新郎が新婦をおぶって部屋をぐるっと一周して終了。
新郎が新婦を背負うのには、「今後一生面倒をみます」という意味があると聞いた。
二人が持っているのが、ご両親、おばあちゃん、お姉さんご夫婦からのジョルカッ。たいていこれは、新婚旅行で使われるそう。




ここでもしっかり写真撮影。
食堂を使える時間がきっちり決まっているらしく、ペベク見学を終えて急いで食堂へ。

受付でご祝儀と引き換えにくれる食券。
だだっ広い食堂は、どこに座るのも自由。席についてスタッフに食券を渡すと、温かいスープとご飯、ククス(うどん)が運ばれてきた。

カルビタン(だったと思う)。















結婚式には欠かせない、ククス。


韓国には、「いつククスを食べさせてくれるの?(遠回しに“いつ結婚式に呼んでくれるの?”“いつ結婚するの?”の意)」ということばが存在するほど、婚礼の席には欠かせない。長い麺に「夫婦が長く幸せに暮らせますように」との願いが込められているのだそう。
同じ意味で、還暦祝いやお年寄りの誕生日の席で振る舞われることも多いという。




キムチを筆頭に赤く辛い料理や、日本ではなかなかお目にかかれないユッケ!!




こんな洋風料理や、 
こんな中華料理も。
カルビチム(カルビの蒸し物)は宮中料理の一つで、その昔王様も食べていた。
お正月や誕生日、結婚式など、お祝いの席によく出るごちそうだ。









デザートにも韓国のお餅が登場。














自分の周りに並ぶ20品近くの料理を、あれもこれもと食べていると、時間ギリギリに食堂へ駆け込んだので、ほかの招待客がどんどんいなくなった。
とうとう私と新婦の家族だけに。
気づけば、私たちの背後で食堂のスタッフが食事を始めていた。



わかるでしょうか?
左に新婦家族、右に式場スタッフ。

日本では考えられない光景だけれど、こういう小さなことにこだわらない(と、私は解釈している)韓国人の大らかさが好きだ。







しまいには、「はいはい、おしまいだよ」……とは言われなかったが、片づけが始まった!

これまた日本ではあり得ない事態。

ポリバケツに食べ残された料理をガンガン捨てながら、「こっちのテーブルならいても大丈夫」と私たちを誘導してくれる、絶妙な優しさを見せてくれたおばちゃんたち。
滞在中、一番「韓国」を感じた場面だったなぁ。








この後、ジヨンちゃん夫婦は新婚旅行に出かけるため空港へと向かい、怒とうの数時間が終わったのだった。


韓国はまだまだ「家督」の風習が残っているので、長男に嫁いだジヨンちゃんがお盆やお正月に実家の家族と過ごすことはもうないのかなぁと、勝手に寂しく思っていたら、「お盆を奥さんの実家で過ごしたら、お正月はだんなさんの実家でという風に、韓国の家族も少しずつ変わってきているんですよ」と、先生が教えてくれた。
そっかよかった、と家族じゃないのにひと安心。


挙式中にも関わらず、自分の出番まで鼻歌で喉を温める鼻歌男も、
挙式の終盤、集合写真撮影時に「遅れてごめ〜ん」とやって来た友だちも、
まだ新郎新婦や親族がいるのに後片づけを始めるおばちゃんたちも、
「あ〜韓国ってこうだった」と、思い出させてくれた。
決してバカにしているんじゃなく、自分にはない鷹揚さがうらやましいのだ。


あまり話せなかったけれど、貴重な体験をさせてくれたジヨンちゃんに感謝!
末永くお幸せに。
次は韓国の新婚家庭をのぞかせてね。
(teamまめ/阿部真奈美