2013年6月11日火曜日

盆栽家 加藤文子さんを訪ねる

突然ですが、盆栽って最近イメージがずいぶん変わってきたと思いません?

「BONSAI」なんてローマ字で書いて海外の方々から注目されていたり、フィギュアと盆栽をコラボレーションさせた、マン盆栽なんてのもありますよね?

一昔前の年寄りの趣味っていう陰気なイメージから、ちょっとポップに変わってきている気がするんです。

今日ご紹介する盆栽家の加藤さんは、またいい意味で盆栽のイメージを裏切ってくれると思います。



こちらの本、2013年4月に刊行された、盆栽家・加藤文子さんの新刊『natural 盆栽 小さなみどりの育て方』。

表紙の写真だって「これが盆栽なの?」と素人が首をかしげるくらい
鉢植えの植物がのびのびとしています。




じつは、このユニークな鼻のオブジェの製作者である那須在住の陶芸家、小沼寛さんの奥様が、「奏デル盆栽」を提唱されている盆栽家・加藤文子さんです。

緑が生き生きとする初夏のこの季節、またしてもおふたりの御宅におじゃまさせていただきました。


まぁ見てください! 加藤さんの手がける盆栽の数々を。




 
なんか自由なんですよね~、植物たちが。
 
盆栽って「型にはめるもの」と思っていると、驚いてしまいます。
 
本の帯にも「針金掛けも寄せ植えもしない、自然で自由な盆栽の育て方」とありますが、
 
手を加えすぎないからでしょうか。。。植物本来の生命力が生き生きと感じられて、
それでいて、可憐。
 
ひとつの鉢がそれぞれの世界観を生み出しています。
 
しかも鉢そのものも、加藤さんが冬の間に手がけた自作の作品であったり、パートナーである陶芸家の小沼さんが手がけたものであったり。。。
 
それぞれの美しさ、一体感があってうっとりしてしまいます。
 
今でこそ加藤さんは盆栽のひとつのスタイルを確立させた一人者として知られていますが、現在に至るまでに長い道のりがあったといいます。
 
 
じつは加藤さん、大宮のご出身。大宮といえば、大宮盆栽美術館、大宮盆栽村などがある盆栽の聖地。
 
加藤さんから4代辿った先人こそが、関東大震災を機に、大正時代に「いい形で盆栽の理想郷を作ろう」と志し、駒込から盆栽村を開拓するため大宮に移り住んだ方々。
 
つまりおじいさまも、お父様も、偉大な盆栽家。
ご本人も20歳でお父様について、古典的な盆栽について学んだそうです。
 
しかし、30歳でお父様に「もうこなくていい」と破門されたのだとか。
 
加藤さんは日々お父様のもとで盆栽について学びながらも男社会になじめなかったといいます。
 
ご本人も、「なんで針金で盆栽を固定して、植物の将来を決め付けてしまうのだろう。。。」と疑問を抱きながら、日々過ごしていたのだとか。
 
正統派であるお父様のもとを独立し、
「奏デル盆栽」という独自のスタイルを提唱することになったのだそうです。
 
 
これが30歳で独立したときに、作った小さな看板だそう。
何か迷うことがあると、この看板を見て初心に返るのだとか。

「植物に対して人間と同じように接したい。
一鉢一鉢ごとに声を聴いて、何を求めているのかを察して、過不足なく与えていく。
一つ一つにベストを尽くすと、それが自然と個性や形になっていきます」


2人の子どもを育てているママでもある私としては、共感でき、胸を打つ言葉でした。


そんな加藤さんが今面白いなぁと感じているのが、1つの鉢に2~3種の枝をさして、発根させてそのままに育てるスタイル。

2年3年とおいていると、根が鉢を覆うようになるそうです。その鉢から鉢だけ外すと、クリンと丸い球体になるんですって。


                  こんなふうに。。。。

苔も生えていて、植物の小惑星みたい。

ひょんなことから出た結果を楽しんで、同じようなスタイルの植物たちを育てているそうです。

「どうなるかわからない」ことを味わうのが、奏デル盆栽の真髄。

自分を信じて、進み続けることで自分の個性をスタイルとして確立されてきた姿勢、植物への愛しみ方……。

女性として人として、
こうありたいなぁと素直に感じさせてくれました。


興味のある方は、個人的に盆栽のレッスンも受けてくださるとのこと。
私もいつか育ててみたいなぁ。。。



                                    (teamまめ/前田真紀)