2012年5月29日火曜日

スタンドバー潮:「基地の街」立川を知る

オジさんの話ってなんだか素直に聞けない時がある。
決めつけがちに言われると、自分の中のひねくれ心がうずいてしまうからだ。

その点、おじいさんはいい。
ましてや客あしらいのプロ、バーテンダーであれば尊敬の念すら抱いてしまう。
穏やかな口調、ゆっくりした動き、押しつけがましくない空気感。
何歳からなんて明確な定義があるわけじゃないけど、余裕が漂うもの。
“おじいさんバーテンダー”。
それはもう自分にとっては格好の興味と憩いの対象なのである。


本日向かったのはJR立川駅。一日平均乗車人数は15万人以上、いまや多摩区随一のマンモスタウンである。周辺には競輪場に場外馬券売り場があり、ギャンブルの街なんて呼ばれることもある。






でも「スタンドバー潮」に行けば、昭和20年の頃から約30年の間、ここがまぎれもなく基地の街だったことを伺い知ることができる。






飲食店が入るビルの階段を地下へと降りる。店の名を灯す看板の蛍光灯は古めかしくチラつき、防火扉のごときドアの重々しさに勇気を試されるだろう。




マスター・白根宗一さんは昭和2年生まれ、御年85歳になる現役のバーテンダーだ。立川飛行場を接収してできた米軍立川基地の将校クラブで働いたのちに、外国人専門のバーを開店した。今でも米兵が付けたニックネーム、「ジミー」の名でとおっている。







最盛期には150軒以上もあったという外人バーだが、残っているのはこちらだけ。
「昔の立川のことならジミーに聞けって大学にも言われるらしくって、ここんとこ学生さんがよく来るんだよ」。
無理はない。ジミーさんはいわば生き証人。
当時のことなど知らなくたって、ジミーさんの巧みな話術で、米兵たちが派手にお金を使い、街に横文字が溢れていたころの活気を思い浮かべることができる。




「長崎や横浜には船で外国文化が伝わってきたけど、立川には飛行機でアメリカの文化が一気に入ってきた。戦後の復興は立川から始まったといえるんじゃないかな」。
なるほどと頷ける話が次々に飛び出す。



さて、カクテルをお願いしましょう。
今日は3杯飲むこと、3杯目はマティーニを飲みたいことを伝えて
あとはジミーさんのチョイスにお任せに。
でてきたのは……  


 




フレッシュレモンジュースとジンをシェイクした、トム・コリンズ。 










ウィスキーをベースにレモンジュース、炭酸、
少々のガムシロでほのかな甘みをつけた、ウィスキーサワー。



「この間はお客さんに『こんなにバーテンダーとしゃべったのは初めて。しかも一回目の来店で』
なんて言われてね。他のバーテンダーはそうしゃべらないんだってね。
でもお客様は中がどうなってるのか、いくら取られるのか、どんな酒が出てくるのかもわからずに扉を開けてくださるんだから、まずはその緊張をほどかなくっちゃ」。

じーーーーーん。











そして3杯目はボンベイサファイアを使ったマティーニ。
とってもやわかな味がします。

いや、数々のクラシックカクテル、
味とかなんとか超越してますからっっっ!




今日、ここに来れてよかったなぁ~って、心から思う。
おじいさんバーテンダーにしか出せない味がある。
 

teamまめ/沼 由美子)
※店内の写真は許可を得て撮らせていただきました。




 

<スタンドバー潮>
立川市曙町2-13 
042-525-6869 
19~24時、日休
カクテルは1杯1000円がめやす。



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