2014年4月23日水曜日

信州・戸隠蕎麦をひもとく

信州といえば蕎麦。
いや、蕎麦といえば信州!
 
ということで、今日は信州……いやいや日本が誇るそば処「戸隠」のご紹介。
 戸隠は以前にもご紹介しましたが、今日は「戸隠蕎麦」のお話です。
 
 
 
 戸隠は、急峻な戸隠連峰の裾野に広がる標高1000mを超える高原地帯。
見るからにとっても険しい山ですよね!
 
余談ですが、戸隠高原には全19のコースが整備された「戸隠スキー場」があり、
“魔法の粉雪”と称されるさらさらのパウダースノーが降り積もるんです。
冬はスキーに来てくださいね。
 
 

冬はスキー場、夏は避暑地としてにぎわう高原リゾート。
ただし、痩せた火山灰土から成る傾斜した土地は、一般的な農地には向かないそう。
 
と・こ・ろ・が!
稲作や小麦の栽培には適しませんが、
実はこの地質こそ、水はけを必要とする蕎麦作りには最適な土壌なんです!
 
 
 

1日の気温差が1520℃と大きく、
朝晩は霧が発生するほどの冷涼な気候もまた、良質な蕎麦の産地たる所以。
 
ぜなら蕎麦は、昼と夜の気温の差が大きい地域ほど養分をしっかり蓄え、
香りや味、甘みの強い締まった実をつけるからです。
 
 
このような環境で育った蕎麦は味に名高い「霧下蕎麦」と呼ばれています。
 
霧下蕎麦は他の地域にもありますが、
その最高峰に君臨するのが、ここ戸隠の蕎麦。
 
風味豊かで薫り高い蕎麦として、全国にその名を轟かせています。
 

 蕎麦粉の質と並んで、蕎麦の良し悪しを決めるのが水。
3分の1は水からできているのですから、当然と言えば当然ですよね!
 
戸隠に降り積もった雪や雨は、森林の土壌にしみわたり、
ミネラルをたっぷり含んだ伏流水となります。
高原のいたるところからこんこんと水が涌き出る地下水。
「戸隠蕎麦」のおいしさの秘密は、清らかな水にもありました。
 
 
 ここで、戸隠の蕎麦の歴史を少しひも解いてみましょう。
その歴史は古く、まだ政治の中枢が京都にあった平安時代まで遡ります。
懸崖絶壁の戸隠山は、
当時より修験者が修行をする霊山として崇められていました。
 
修験者たちは、肉や魚はもちろんのこと、
米や麦、粟、稗、豆といった穀物も一切摂らない
「五穀断ち」という厳しい行を行っていたそうです。
その時に唯一持っていくことが許されたのが蕎麦だったとか。
 
山岳修行において、蕎麦は大変貴重な携行食糧。
修験者たちは、蕎麦粉を水に溶いて食べたり、
時には蕎麦粉を練って焼いたものを持って山に入ったと伝えられています。
 
 
実は忍者の里としても知られる戸隠ですが、
その正体は、特に卓越した能力を習得した修験者だったのではないか、ともいわれています。


さて、戸隠を語る上で――いや「戸隠蕎麦」を語る上でも欠かせないのが、
奥社、中社など、5つの神社からなる「戸隠神社」の存在でしょう。
 
 
 
もともとは、寺と神社両方の機能を持つ「戸隠山顕光寺」と称していて、
創建からたどると、2000年余りの歴史を有する由緒ある神社です。
その後、江戸時代に水の神、農業の神として信仰を集めるようになり、
「戸隠講」と呼ばれる信者たちが、参拝のために日本各地から戸隠を訪れるようになりました。
 
 
こうした参拝者に宿を提供したのが、「宿坊」です。
戸隠では米が生産できなかったので、
宿坊では、ご飯の代わりに蕎麦を出して参拝者をもてなしました。
宿坊のご主人曰く、「ランチやディナーのような感覚で楽しんでください」とのこと。
 

 
戸隠の宿坊で食べる蕎麦は、ファストフードではなく“コース料理”の感覚なのだといいます。
蕎麦や天ぷらのほかにも、今なおたくさんの料理が添えられるのは
こういった理由からなんですね。
 
 
 
戸隠には現在も34の宿坊があり、
自慢の手打ち蕎麦で客人たちをもてなしています。
一般客も宿泊できるので、観光の際に立ち寄ってみるのもいいかもしれません。
食事のみでの利用(要予約)や食事処を併設しているところもあるので、
蕎麦屋との違いを体感してみてもおもしろいと思います!
 
 
 戸隠神社のまわりには、宿坊のほかにも蕎麦屋が密集。
狭いエリアにこれだけの蕎麦処が密集するエリアは珍しいそう。
20の専門店が点在しています。
ちなみに、戸隠蕎麦の特徴は「甘みが強くて香りがいい」とか
冷たい水でしめて提供するので、ぎゅっと締まって麺の食感も抜群です!
 
 
 
戸隠蕎麦の盛り方はとても特徴的。
茹で上がった蕎麦を冷水に放ち、水を切らないまま竹ザルに盛るんです。
その際、馬蹄型に折り曲げ、少量ずつのかたまりで盛るのがポイント。
この盛り方は「ぼっち盛り」と呼ばれていて、1人前5ぼっちが一般的とされています。
 
その昔、宿坊では大きなザルを囲んで皆で蕎麦を食べていたため、
「少量ずつとりやすいよう」この盛り方になったのだとか。
宿坊で始まった「戸隠蕎麦」の伝統は、界隈の蕎麦店にもしっかり受け継がれていました。

(teamまめ:松井さおり)

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