2012年12月11日火曜日

金時山で金太郎のたくましさを知る

食に関する仕事をしていると、一度の食事で2軒ハシゴ、一日3軒取材、なんてことは多々あり、朝食や夕食を抜いて帳尻を合わせようとしても、無理があるほどカロリー過多になる。
それなら運動をするという手が世間一般的にはあるだろうが、私には「寒い」「めんどくさい」という理由で、ないのが困ったところだ。


そんな横着者でも、趣味+運動+気分転換で続いているのが山登り。
電車やバスで行ける東京近郊の山ばかりで、「縦走」とか「山小屋泊」に憧れている、まだまだ初心者同然だけれど。
紅葉に間に合わないのは承知で、年内最後、富士山を拝みに金時山へ登ることにした。

金時山は神奈川と静岡の県境にあり、箱根山の北部に位置する。
標高1213mで山頂からの眺望がすばらしく、箱根登山の中では人気の山だとか。
ロケーションもいいけれど、私には「金太郎伝説」発祥の山というのが何より魅力的で、いつかは登りたい山の一つだった。

ルートはいくつかあるが、新宿から御殿場経由の小田急バスで箱根へ向かい、途中「乙女峠」で下車し、金時山を目指すことにした。






 バス停に下りた途端、感じる冷気。
さっそくかっぷりよつに組んだ、金太郎とクマとの出会いにも感激! ぷりっとしたお尻がかわいいこと。

(「乙女峠」下車すぐ、目の前にある「ふじみ茶屋」駐車場の銅像横の看板より)
金太郎(坂田金時)は、金時山の山麓で生まれ、大きくなるにつれて、物凄い怪力となり、斧で太い木を切り倒したり、熊と角力をとって遊んでいました。ある日、東国をめぐって京へかえる源頼光に見出され、一緒に京の都へ上りました。そして、立派な侍になり、頼光四天王の一人に数えられ、大江山の酒呑童子を退治したのは有名なお話です。

登山口は 一見通行止めのように見えるけれど、表示が出ていたのでかまわず進む。



前日降った雨で、山中の空気も匂いもやや湿気を帯びていた。
苔もしっとり。


 
根っこが丸裸。
古箱根火山の寄生火山だからなのか、赤土になったり、真っ黒な土になったり、その断層もはっきりしていた。
登山者を試すかのように、道の真ん中に奇岩がゴロゴロ。金太郎がここを走り回っていたって、ほんとだろうか。


 ゆ〜っくり40分ほどかけて乙女峠(1005m)に到着。

 天気のいい日は、この展望台から富士山を見られるそうだが……。




                                     

                                
      

このとおり。
うらぶれた山小屋のような店に
「飲んでみようか
谷やんのホットコーヒー400」
の看板が。
飲んでみたかった、谷やんのコーヒー。 








(乙女峠の看板より)

昔、仙石原の娘が父親の病気を治そうと、峠の先の地蔵堂に日参し、満願の日に父親の病気は治りましたが、彼女は雪に埋もれて死んでしまった、と伝えられています。彼女の霊を哀れみ、乙女峠と呼んでいます。



 さぁ、ここからもうひと踏ん張り。
表示では金時山まで35分。

金時山は昔、その山の形から「猪鼻嶽(いのはなだけ)」と呼ばれ、急峻で岩場が多い。
山頂までの尾根筋には、道の両側が切り立ったガケが続き、おふざけは禁物。
そんな道を歩きながら、ふと遠くに目をやると、あれはもしや!
ひゃー。ついに現れた!


高いところから見ると、紅葉もほんの少しだけ残っていた。 

 えっちらおっちら、最後の力を振り絞ると、ようやくようやく。
山頂が見えてきたー!
到着は13時を過ぎていた。













 茶屋が2軒並ぶ山頂。
飼われているのか、ネコがいた。どうやってここまで登って来たんだろう。






お昼は初の山頂ラーメン。

汗が冷え、山頂はかなり体感温度が低かったので、あったかい汁もので生き返った。


        
山頂のバイオトイレ。薬品も水も使わず、微生物の働きを利用したシステムだそう。
「募金箱」とはなっているが、なんとなくみなさん100円を入れて、使っている様子。 




至る所に金太郎の気配を感じ、悦に浸っていると、「もう3時だよ。次はもっと早く登って来なさい」と、茶屋のおばちゃんに急かされ、下山開始。 


 仙石原方面へは表示時間55分。
かなり険しい岩場で、足がもつれて転倒し、精神的ダメージを受ける。
もう自分が思っているより足が上がっていないのか、私。

 山は天気も変わりやすいが、日が暮れるスピードも早い。とっぷり暮れてしまう前に、慎重に帰りを急ぐ。












でも、こういうむき出しの根っこや、ふかふかの落ち葉にはついつい足を止めてしまうんだなぁ。 




 9割下山したところで、突如現れた標語。

「金太郎 ボーと見つめる ゴミの山」


すばらしいセンス!

金太郎がゴミの山を目の当たりにし、
脱力して動けなくなっている姿が目に浮かんだ。





















 


















最後に、御祭神が坂田公時(さかたのきんとき=金太郎)という、公時神社でお参り。

帰りは遠くの方の夕焼けを見ながら、「公時神社入口」からバスに乗り、帰路についた。










もっとのんびり、余裕で臨める山と思いきや、予想をはるかに超える“男度”に引いた。金太郎♪童話の世界♪なんて、夢見がちだった自分が恥ずかしい。
「菱の腹掛」1枚で、クマやイノシシ相手に、こんな険しい山をかけずり回っていたなんて。金太郎は男でした。
(teamまめ/阿部真奈美)