なにしろ韓国が好きだ。
できることなら毎日韓国料理を食べて、行きたい時に韓国へ行きたい。
けどそれには、時間もお金も、お金もお金がない。
それでも韓国っぽいものに触れたいから、
この韓国欲を満たしてくれる場所、もの、味を求めてずんずん行くことに決めた。
初回は何のひねりもないがコリアタウンへ。
だけど激混みの新大久保へは足が向かないし、赤坂も東上野もメジャーだなぁ。
そう思ってパソコンを叩いてみたら、出ました「横浜橋商店街」。
初めて聞く名前にディープさを期待しつつ、いそいそと向かう。
JR関内駅から歩くこと15分。
じんわり汗をかいた頃にようやく見えてきた。
130を超える店舗は大半が食料品店と飲食店といい、週末とあってけっこうな人出。
かなりの率ですれ違う人から中国語が聞こえたが、韓国語は一度も聞けないまま、
商店街で唯一の韓国料理店「南山亭」に到着。
そう……「唯一」というのは、出かける前から気にはなっていた。
けど商店街の誰かの口から「そう、ここコリアタウンだよ」という言葉を聞ければいい。いいんだ。
12時前の店内は、韓国人客2組と、ビールからマッコリへと移行している常連らしき日本人のおじさん、そして私。
注文したキムチチゲ1000円は、グツグツ沸き立ち地獄のよう。キムチの酸味と辛みがやさしめで、厚切りの豚バラ、白菜キムチ、豆腐がたっぷり入っていた。
もちろんおかずも供され、この日は白菜キムチ、小松菜のナムル、ニンニクの芽と干しエビの和え物、サツマイモとカボチャの甘辛い煮物の4品。
韓国ではサムゲタンやウナギと肩を並べて、栄養食、精力増進で知られるドジョウ汁。
確かにこの日は暑かったけれど……なぜ?
周りのドジョウに気を取られ、自分のキムチチゲが全然進んでいない私を心配してか、
店のお母さんが「辛い?」と話しかけてくれた。
よしチャンス! ドジョウも気になるが、まずはあの疑問だ。
私「ここがコリアタウンって聞いて来たんですけど……」
お母さん「ここはコリアタウンではないネ」
私「(かなり焦って)う、あ、でも、キムチ屋も韓国食品店もけっこうありますよね。
やっぱり、韓国の人が多く住んでるんですか?(住んでるんでしょ! でしょ!)」
お母さん「ううん、そんなには多くナイ。(コリアタウン)じゃないヨ」
がーーーーーん。
お母さん、いいんだよ謙遜しなくて。
「ウチ1軒だけだけど、コリアタウンだと思ってやってる」とかなんとか言っちゃっていいのに!
「商店街の誰かがコリアタウンと言えば、もうそこはコリアタウン」
自分で定めたゆるゆるなルールが、一瞬で崩れた。
でもでも、韓国料理店は1軒だけでも、そこのお母さんはコリアタウンじゃないって断言しても、キムチを筆頭に韓国の食料品を扱う店が多いのは事実。
お腹は満たされたから、次は買い物欲を満たそうと商店街をぶらりしてみた。
メインストリートではなく、細い路地にある「南山家キムチ」では白菜キムチ500円を購入。
ここでもお姉さんに「ここ、コリアタウンなんでしょ!」と半ば強引に聞いてみるが玉砕。
「キムチの店 京城物産」では、セロリとキュウリとホウレン草のナムル350円を買う。ここのお父さん、明るく元気な方でいろいろ教えてくれた。
韓国人が日本にやって来てお金を稼ぎたいと思った時に、「自分には何ができる?」と考えたら、それが「キムチを漬けること」だった、とか。昔は韓国人相手だったけど、今は日本人が韓国料理を普通に食べるようになった。だから商店街に複数の同業者がいても商売が成り立つ、とか。
愉快なお父さんが生む商品は、トマトのキムチ、梅のキムチ、野沢菜のキムチなどなど、個性派ぞろい。
「福美高麗人参産業」のお母さんは、「ウチは22年前からやってて、ここで一番古いネ」。これが自慢のようだった。
ひとり暮らしにちょうどいい少量のナムル300円があったので、購入する。
少々不完全な想いは、その日の夕飯で解消。
白菜キムチとナムルでビビンバに。
韓国っぽくしたかった、というより、腹ぺことめんどくささでボウルによそった。
肉も目玉焼きすらない素ビビンバ。
食べにくいので、キムチもナムルもジョキジョキとハサミで切り刻み、
コチュジャンを入れてワッシワシかき混ぜたらできあがり。
んーおいしくないわけがない。
コリアタウンと呼ぶには……な商店街だったが、
考えてみれば「コリアタウン」と謳っているわけじゃないから当然。
よくある商店街にしては、1軒でもうまい韓国料理屋さんがあって、
何軒もハシゴできるキムチ屋さんがあり、韓国度は高め。
何軒もハシゴできるキムチ屋さんがあり、韓国度は高め。
いいなぁ、ご近所さんがうらやましい。
ごちそうさまでした!
次は三河島か川崎か。いやいや、まさかのメッカ??
(teamまめ/阿部真奈美)