透明度の高い、きれいな海が広がっている。
のどかな景色だ。
ここは、5つの浜が点在する宮城県の牡鹿半島。
お邪魔した3月上旬は、牡蠣やワカメの養殖で大忙しだ。
その一つ、竹浜に向かった。
そこには「後藤家の食卓」を運営する後藤さんがいるのだ。
後藤章さん。かき漁師の4代目だ。 |
後藤さんちは、もともと港の目と鼻の先に自宅があった。
「浜は海風が強い」と笑うけれど、風光明媚な場所にあり、漁にも出やすい、海の様子もすぐわかる、漁師にとっちゃサイコーな場所だ。
けれど4年前、津波が押し寄せた。
後藤さんは沖に退避し、家族も全員無事だった。自宅は奇跡的に持ちこたえたものの、とても住める状態ではない。それでも、泥を何度も何度もかきだし、風除けの板を戸板代わりにうちつけ、いくつもの夏と冬を超えた。
「結局、竹浜に13軒いた漁師のうち、半分はここを去りました。町(石巻)に家を建てて、こちらには通うという感じですね」
後藤さんは昨年末に高台移転でき、日々、海へと出ている。今年度の牡蠣はすでに完売のため販売終了していて、目下は、わかめ収穫に大忙しだ。
それでも来期に向けて「石巻かき」という名前で、もっと牡蠣を知ってもらいたい、と意欲を見せ、震災直後から始めたネット通販にも力を注ぐ。
じつは食用牡蠣の大多数が、石巻・牡鹿半島にルーツがある、という話をご存知だろうか?
沖縄生まれの宮城新昌氏が、牡蠣養殖事業に乗り出した後、昭和初期、牡蠣の養殖と、採苗の研究をはじめた地が、この石巻・牡鹿半島だ。干満の差が大きく、プランクトンも豊富。強い種ガキが育ちやすい環境なのだという。
その後、養殖方法が国内各地へ伝播し、さらには海外へと輸出されるようになったという。そして、この地はワカメ養殖の先駆けともなったのだ。
さて、牡蠣は出荷するまでに処理をしないと食べられない海産物だ。
なにせ、海の栄養分をギュギュギュッと身に凝縮させるのだから、なかには、ノロウイルスなども含まれてしまう。
つまり、殻付きの牡蠣といえど、海から揚げたらそのまま出荷というわけにはいかない。カキの処理が必須なのだ。生食用となると、さらに神経を尖らせるのだという。
そこで後藤さんは、生食用の通販は「むき身」と決めている。
「殻付き牡蠣の生食だと、身の状態をこちらで確認することができないんです。オイスターバーやお店など、きちんと状態を見極める方がいるところならいいんですけどね」。
漁師として、安全でおいしい牡蠣を、ちゃんと届けたい。
その一念と責任をしっかりと背負う後藤さんの目は、すでに次年度に向いていた。
竹浜への入り口 |
震災から4年、ようやく岸壁工事がはじまっている |
震災で1mほど地盤が沈んだため、 かさ上げ工事となった。舟への乗り降りは大変だ。 |
かつて住宅が並んでいた浜は、ほとんど更地になっている。 |
3月上旬の様子 |
teamまめ/佐藤さゆり
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