2015年4月14日火曜日

海と生きる人々②竹浜〜宮城県牡鹿半島〜

 透明度の高い、きれいな海が広がっている。
 のどかな景色だ。

 ここは、5つの浜が点在する宮城県の牡鹿半島。
 お邪魔した3月上旬は、牡蠣やワカメの養殖で大忙しだ。
 その一つ、竹浜に向かった。
 そこには「後藤家の食卓」を運営する後藤さんがいるのだ。
後藤章さん。かき漁師の4代目だ。

 後藤さんちは、もともと港の目と鼻の先に自宅があった。
「浜は海風が強い」と笑うけれど、風光明媚な場所にあり、漁にも出やすい、海の様子もすぐわかる、漁師にとっちゃサイコーな場所だ。
 けれど4年前、津波が押し寄せた。

 後藤さんは沖に退避し、家族も全員無事だった。自宅は奇跡的に持ちこたえたものの、とても住める状態ではない。それでも、泥を何度も何度もかきだし、風除けの板を戸板代わりにうちつけ、いくつもの夏と冬を超えた。

「結局、竹浜に13軒いた漁師のうち、半分はここを去りました。町(石巻)に家を建てて、こちらには通うという感じですね」

 後藤さんは昨年末に高台移転でき、日々、海へと出ている。今年度の牡蠣はすでに完売のため販売終了していて、目下は、わかめ収穫に大忙しだ。
 それでも来期に向けて「石巻かき」という名前で、もっと牡蠣を知ってもらいたい、と意欲を見せ、震災直後から始めたネット通販にも力を注ぐ。
 
 じつは食用牡蠣の大多数が、石巻・牡鹿半島にルーツがある、という話をご存知だろうか?
 
 沖縄生まれの宮城新昌氏が、牡蠣養殖事業に乗り出した後、昭和初期、牡蠣の養殖と、採苗の研究をはじめた地が、この石巻・牡鹿半島だ。干満の差が大きく、プランクトンも豊富。強い種ガキが育ちやすい環境なのだという。
 その後、養殖方法が国内各地へ伝播し、さらには海外へと輸出されるようになったという。そして、この地はワカメ養殖の先駆けともなったのだ。

 さて、牡蠣は出荷するまでに処理をしないと食べられない海産物だ。
 なにせ、海の栄養分をギュギュギュッと身に凝縮させるのだから、なかには、ノロウイルスなども含まれてしまう。
 つまり、殻付きの牡蠣といえど、海から揚げたらそのまま出荷というわけにはいかない。カキの処理が必須なのだ。生食用となると、さらに神経を尖らせるのだという。
 そこで後藤さんは、生食用の通販は「むき身」と決めている。
「殻付き牡蠣の生食だと、身の状態をこちらで確認することができないんです。オイスターバーやお店など、きちんと状態を見極める方がいるところならいいんですけどね」。
 
 漁師として、安全でおいしい牡蠣を、ちゃんと届けたい。
 その一念と責任をしっかりと背負う後藤さんの目は、すでに次年度に向いていた。
 
竹浜への入り口
震災から4年、ようやく岸壁工事がはじまっている

震災で1mほど地盤が沈んだため、
かさ上げ工事となった。舟への乗り降りは大変だ。

かつて住宅が並んでいた浜は、ほとんど更地になっている。
3月上旬の様子

teamまめ/佐藤さゆり

 

0 件のコメント:

コメントを投稿