2013年5月21日火曜日

忍者の里・伊賀でニンニン

人には多かれ少なかれ変身願望がある。
日常を捨て、己の身を隠し、一瞬でもいいから違う人生を歩き、違う景色を見てみたい。
そんな気持ちになることはないだろうか。

さえない主婦兼フリーライターとして毎日を過ごしているが、変身願望にかられた私は友人と娘(2)を引き連れて女3人旅に出たのだった。

品川駅から新幹線に乗ってまずは名古屋へ。
そこからさらに関西本線に乗り継ぎ、約2時間半も要する長旅だ。
そしてやってきました、忍者の里・伊賀に!


どこもかしこも忍者が潜む

JR関西本線伊賀上野駅からは、中心地の上野市駅がある伊賀鉄道へ乗り換える。
そこで我々を待ち受けていたのは……ピンク色の頭巾を被った忍者!

忍者列車はピンクのほかにブルーとグリーンもある


思わず息をのむほどのシュールさがただようが、車体デザインを手掛けたのは『銀河鉄道999』の作者でもある松本零士氏。
こんなにシュールなのに、こんなに面白いのに、乗客は誰も反応していない。
地元の人にとっては単なる日常の足であり、興奮しているのは観光客(のうちでも私たち)だけなのだ。

麗しい横顔のくノ一

中吊り広告は見事に忍者関連

扉にだって忍んでいます


発車間際までこれでもかというほど写真を撮りまくり、いよいよ上野市駅を目指して出発。

ところが、次の駅に到着間際に流れる車内アナウンスを聞いて、耳を疑った。
「次はニン、ニン~」

えええっ!?!?
次はニンニン?
ちょっとおふざけが過ぎるのではないか、伊賀鉄道。
忍者の町なのはわかるけど、車内アナウンスは真面目にやろうよ。
と思ったら、「新居(にい)駅」でした。
単なる自分の聞き間違いだとわかり、ホッと胸をなでおろした。
すでに脳ミソまでも「忍者」に支配されていたのだ。

伊賀鉄道さんを疑ってごめんなさい!

電車は15分ほどして上野市駅に到着。
ホームに着くと、またしてもやつらが忍んでいた。
油断も隙もあったものではない、それが忍者の里・伊賀なのだ。

















そして、ついに変身

まずは、忍者に変身するために「だんじり会館」へ向かう。

市内には「ぷち忍者変身処」といわれる忍者コスチュームを貸してくれる施設や店が7ヵ所もあるのだそう。

事前に市の観光協会に電話で教えてもらった情報によると、衣装の所有数が一番多いというので、だんじり会館を選んだのだ。
(子どもから大人まで全部で300着ぐらいを所有しているのだそう)


忍者衣装料はおひとりさま1000円。
ただ、だんじり会館には「忍者修行通行手形」が販売されていて、
①忍者衣装料
②伊賀流忍者博物館入館料
③手裏剣打体験料
がセットになっていて、ちょっとお得なのでこちらを購入。






そして、館内の2階に用意された部屋で着替えて(わからなければスタッフが手伝ってくれる)、ついに憧れの忍者に変身したのだ。


ふふふ。どうだい? 忍者だけど、ベビーカーを押しているんだよ


忍者姿で町を観光

忍者になってまずやりたいこと、それは喫茶店でのコーヒーブレイク。
やってきたのは、だんじり会館からほど近い「食事&珈琲 橘」へ。

忍者の町とはいえ、本当にこの格好でお店に入っていいのだろうか?
入店を断られはしないだろうか?
ドキドキしながら一歩を踏み出す。
「いらっしゃいませ~。お好きな席へどうぞ~」

あっ、いいんだ。
本当にいいのね? 入っちゃうよ?
と疑心暗鬼のまま窓際の席へ。

注文したのは「忍者珈琲」。
いわゆるウィンナーコーヒーといってしまえばそれまでなのだが、別の考え方をすればコーヒーがクリームの下に潜んでいる。
間違いなく忍者を意識したコーヒーなのだ。


あの褐色の飲み物が潜んでいます

忍者姿で窓の外を見つめる友人。この町ではいたって自然な光景(たぶん)

次に訪れたのは、上野城公園内にある伊賀流忍者博物館へ。
こちらでは、忍者屋敷の仕掛けやからくりをくノ一姿の美人スタッフが紹介してくれる。



一見、何度もない壁がくるっと回る「どんでん返し」

ひと通り屋敷の説明が終わった後は、地下にある忍者体験館へ。
こちらでは、水蜘蛛を疑似体験したり、かつて忍者が実際に使用していた手裏剣をはじめとする忍具などが展示されている。


敵から逃げるときに使ったまきびし



スタッフが実演してくれる忍術ショーもあるが、今回は予定が合わずに断念。
最後に、手裏剣打体験をすることに。
思っている以上に手裏剣が重く、的までなかなか届かない。
結局、5発中1発も命中しなかった。悔しい…。









忍者博物館を後にし、伊賀上野城へ。
白い三層の城郭は鳳凰が翼を休める姿に似ていることから、別名「白鳳城(はくほうじょう)」とも呼ばれるらしい。
その姿は美しく、名城といえよう。

日本有数の石垣の高さを誇る伊賀上野城

ここでもまた、忍者姿でやりたかったことが。
約30mもある高い石垣を前にして忍んでみる。ニンニン。

私たち、すごく忍者っぽくないでしょうか?

忍者を満喫したところで、暑くて限界という理由で忍者コスチュームは脱ぐことにした。
本物の忍者になるためには、まずはこの根性から叩き直さねばならぬようだ。




忍者グルメにしてやられたり

私服に着替えた私たちは、駅前の大衆食堂「ニカク食堂」へ。
なにはともあれ、まずは生ビールを注文した。


私服で至福の一杯! 
 お店からサービスで折り紙で折った手裏剣を5つもいただいた。
こういう心遣い、とても好きです。

そして注文したのは、忍者うどん(冷)850円。
運ばれてきたのは、こちら。


見た目、随分とシンプルだな~と思いませんか?
しかし、もちろんここにも仕掛けが。


うどんをひっくり返すと、海老天、海苔天、錦糸卵、シイタケ、キュウリ、プチトマト、ワカメ、わらび餅など、いろんな具が出てくる、出てくる。
(ちなみに、温かいうどんだとわらび餅の代わりに焼き餅が入るそう)

この仕掛けにも、そしてぶっかけスタイルで喉越しのよいうどんにも、やられました。
女将さんもチャキチャキしていて、なんとも居心地のよい店でした。


次の忍者グルメは、「むらい萬香園」の忍者パフェ680円。
なんとこちらのお店、先々代は最後の伊賀流忍者を研究し、忍者塾を開いていたことでも有名な方だそう。
パフェのポイントは、忍者がドロンと煙に巻いたような見た目と手裏剣型のかたやき。
かたやきはものすご~く堅いので、歯が弱い人は要注意だ。

老舗のお茶屋さんらしく、抹茶のソフトクリームが濃厚で上品な味わいでした


最後に、帰りの電車で食べるようとテイクアウトしたのが、「末廣寿司」の忍者ちらし1050円。


こちらも、キャラ弁のごとく忍者の顔がお目見えするのだが、ひっくり返すと……


ば~ん!!!
豪華な具がてんこもり。
伊賀米を100%使用しているそうで、ご飯も噛むほどに甘くて贅沢な味わいでございました。



1日めぐって思ったこと。
伊賀は町を挙げて頑張っています。
伊賀では忍者姿で喫茶店に入っても温かく迎えてくれます!
使用後の忍者コスチュームは、職員がすべて手洗いをしているそうです!
こだわりの忍者グルメは、お客さんを喜ばせようという愛情さえも感じました!

そんなステキな町に、今度は夫も連れて家族3人で忍者になろうと密かに企んでいるのです。

(teamまめ/香取麻衣子)