某日、19時30分。
渋谷駅に降り立った。
今年4月にオープンした「渋谷ヒカリエ」をはじめ、いろんな再開発事業で「大人の街」への変貌をねらっているというけれど、実際大人たちは渋谷で遊ぶようになったのかな。
東口の変化はさておき、ハチ公口から数分のところにだって、大人がほっと息をつける穴蔵がある。それも渋谷センター街のまん真ん中に。
居酒屋の呼び込みをかわしつつ、向かったのはマックに隣接する雑居ビル。
この8階に「バー コレオス」がある。
マスターの大泉洋さんは、御年78歳。
この道56年、渋谷最年長のバーテンダーでらっしゃる。
(写真=オカダタカオ) |
かけつけ一杯目は、ジン・フィズを。
搾りたてのレモン果汁が多めで、爽快な飲み口(唾液がじゅわじゅわ~)!
ある程度飲んだら、氷をひとつ、グラスに落としてくれる。
大泉氏は、進駐軍の将校クラブを経てバーテンダーの世界へと入った。
ホテルで経験を積み、最初に開いた店「コレヒオ」はなんと渋谷109の最上階にあった。
「変なところに、変なバーがあるのもおもしろいかと思ってね」なんて、とても勝算があると思えない立地も、軽々自分のイニシアチブに持ち込んでしまうのがすんごい。
オーセンティックな空間なのに、マスターの冗談ばかりの軽妙なトークにも和みます。
マティーニは氏の代名詞といえるカクテルだ。
いわゆる「将校クラブ」である山王ホテルのバーにいた頃は、あまりにもマティーニの注文が出るため、通称「進駐軍マティーニ」という特別な作り方をしていたという。
ジンのボトルにベルモットを数滴たらして、冷やすだけ。それを注文が入ったら、氷にくぐらせてグラスに注ぎ、オリーブを添えた。……ほぼストレートですね。宇ち多″@立石の梅割りを彷彿させます。
現在提供しているマティーニは大き目のショットグラスで。
華やかでキリリと締まった味わい、飲みごたえも十分。
ウィスキーベース、甘くないショート、をリクエストすると、ドライ・ロブロイを勧めてくた。
ロブ・ロイは甘いベルモットを使うけど、「ドライ」が付くと辛口のベルモットを入れるのだとか。
そのお味はというと……
これ、ウィスキー版マティーニだ!
思わず言葉がこぼれた。「勉強になります」。
そこにすかさず、
「お酒で勉強なんかしてはいけませんよ。お酒は楽しむものですから」とのご返答。
もっとこの人のカクテルが飲みたいな。
喧騒の中のオアシスは、枯れない魅力が満ちていた。
(teamまめ/沼 由美子)
※写真は許可を得て撮らせていただきました。
<バー コレオス>
東京都渋谷区宇田川町28-1
高山ランド第15ビル8F
03-5459-1757
17時~翌1時30分LO
(日・祝~22時30分LO)、無休
カクテル1050円~、サービス料10%
大泉氏が出勤するのは通常月、火、金の20時頃~。